ルールに関してTDLとXPには共通点がある、、かも

ルールについては時々考えることがあるが、「Embedded Software Manufactory: ルールに振り回される日本人」を読んでいて思い立ったことがあった。

この文章にはルールを遵守しすぎて半ば非難されている東京都と、ルールを超えて真の目的を達成することを賞賛する東京ディズニーランド(TDL)が比較されている。ちなみにTDLの話は、幼児を持っている親には涙無くして読めないほど感動を与える事例だ。きっとご両親はとても嬉しかったと思う。で、私は実は東京都のケースもTDLのケースもルールを厳格に守ったが、そのルールの設定の仕方で結果に大きな差が出たケースだと考えている。おそらくTDLにはわざと文書化されていないルールが多数存在し、それを口頭やOJT(On the job taining)で新スタッフに教育していて、この話の場合でもスタッフは考えた結果というより、ましてルールを逸脱することと真の目的を比較するような思考の結果などではなく、教えられたルールにそった行動を取ったに過ぎないのではないだろうか。

素晴らしいのはそのようなルールまでも作ったTDLの運営側で、特に「ルールを越えた」ような感覚とそれを自分で達成した感覚をスタッフに感じてもらうため、きっと教育を受けたスタッフならこっちを選択するだろう、というような分岐をいくつか設けることで、なるべく自分で選択したように思わせているところだ。

東京都のようにどちらかというとやらされ感で、ルールを適用した後のことを考えるようなことは普通は起きない状態と違い、TDLでは責務とモチベーションがバランスよく表れ、それがさらに良い雇用につながり、常にトータルの品質を保てているんだろう。

この方法論はまさにXP(eXtreme Programing)でも実現されているのではないか。XPは実は開発者、リーダー(管理者)、そして顧客にまでルールを厳格に規定している開発プロセスだが、要所要所にこの3者にプロセスの最適化も含めて責務、つまり分岐が備わっていて、都度判断を求められる。例えば計画ゲームでは開発者に見積もらせ、それを元にイテレーションが計画されるため、開発者は自分の分析結果から計画を左右する見積もりの提示を求められる。しかしその見積もりに対して他のメンバーは(おそらく顧客も含んで)アドバイスができ、見積もりが変化することがある。つまり自分で判断しているにもかかわらず、大きな間違いが起きないようにルール化されているのだ。またTDD+ペアプロでも自ら設計をしながらコードを書いているが、リアルタイムでレビューと自動テストが実施されてるため、間違った方向にはいかないようになっている。そして顧客も、彼らにとって納期は重要だが、仮に決めたとしても実際の開発でどうしてもそこまでにできないことがわかってくるため、納期延期かフィーチャー削減を余儀なくされる。これは開発に無理強いすることなく、顧客が自分の意思でリリース計画をする責務を持つことになる。

このようにXPでは自分の責務で分岐を判断しているようでいて、他のメンバーとの相互作用で間違いの無い選択が行われる仕組みになっている。これは各メンバーが目的を見失わないようなルールになっているからで、ここがTDLとの共通していると感じている。きっと全てが明文化されていると人との相互作用が無いか希薄なため、正しい判断やモチベーションに対しマイナスに作用してしまうのだろう。

ただこの明文化されていないルールを伝達するには、人づてということもあり根付くまでに相当な時間と労力が必要になる。しかし一旦根付くと、その組織やプロジェクトは強固になり、問題を自ら跳ね除ける力を持てるのだと思っている。