阿部公房の壁

この春入社した新人さんの歓迎会で、その新人さんが読書が好きで、今、阿部公房の「箱男」を読んでいると、おもむろにかばんから文庫本を取り出していた。安部公房かい、と思いつつも、一時期好んで阿部公房を読んでいたことを懐かしく思い出した。古本屋で日本文学全集のうち、阿部と大江がペアリングされた巻だけがポンと置かれていたので、値段もそこそこだったこともあり買った帰った。どちらかというと阿部より大江が読みたかったから買った。というのも阿部は箱男や砂の女等、読んだことがある作品があったが、大江は左がかった短編を1つ読んだだけだったからだ。ところが阿部を読んだらはまってしまい、大江はほとんど読まないまま、また古本屋に売ってしまった。中でも「壁」は衝撃的だった。ここの方は冒頭を覚えていらしたようだが、私は冒頭よりもラストの1シーンがたまらなく、なんというか肛門をギュッとしめずにはいられない気分だったことを覚えている。そしてそこだけ何度か読み返しては、何度も肛門をギュッとしめた。その場面以外にも、壁というものの厚さ、そしてその存在ゆえのむなしさに心打たれるシーンがいくつかあったと記憶している。また読み直してみようかな。

壁 (新潮文庫)

箱男 (新潮文庫)