洗濯機と洗濯板

@kussy_y のtweetが気になって仕方なく、国内で1号機を出したメーカーの関連会社に勤めているという、ほとんど理由にもならない理由で少し調べものをしてみた。まずそのtweetだけど、

主婦が洗濯板で洗濯してた時代に、主婦の要望を満たす製品を作るとしたら、
とてもよく汚れが落ちる洗濯板だろう。そこに洗濯機を開発したのは、新しい
考え方を提供したかったからでしょ?それと同じなんじゃないかな。製品仕様
なのではなく、家庭向けにクラウド使いたかったのよ、きっと。

で、趣旨とは別に洗濯機と洗濯板の関係、つまり洗濯機はいつごろできた物で、それは洗濯板よりも後なのか、また洗濯板を見ていた人が何かイノベーション的に洗濯機を発明したのかどうかが知りたくなった。Webで簡単に調べたところちょっと興味深いことがわかった。

洗濯の歴史は古く、古代ローマには公共のランドリーが設置され、そこで洗濯が行われていたとの記述がある。その方法は尿などを漂白剤として使い、水がたまっている場所で衣類を漬け、それを手で回したり足で踏んだり、また固いものに叩きつけたりしていたそうだ。また水を貯めておくものとして「たらい」も歴史が古く、日本でも平安期の記録にあるらしい。
そして"洗濯板"については資料によってその登場時期に差があるものの、よく読んでみるとどうも波状のギザギザ突起が付いた板も洗濯板と呼ぶし、単に洗濯物を棒で叩いたり叩き付けるための板も洗濯板と呼ぶそうで、後者がローマ時代に使われいたのに対し、前者は実に18世紀(ある資料には1797年とあった)の発明品なのだそうだ。
一方洗濯機の方は、洗濯機の定義によるところもあるけれど、ドラムの中に洗濯物を入れて手で回すタイプだと1752年の文献にその絵が掲載されているし、しかも1691年と波状突起の洗濯板の100年近く前に洗濯機と脱水機に関する特許が登録されている。

このように確かに"板"を用いての洗濯は古代から使われていたが、洗濯機が登場した後に大きな進歩となる波状突起の"洗濯板"が発明されているので、洗濯機は決して革命児などではなく、洗濯板と100年以上も共存せざるを得ない程度の不便さを持ったものだったのではないだろうか。そして洗濯機が今の洗濯機として世を席巻するのは電気が普及した1910年以降で、回転という電気からの変換が難しくない構造が洗濯板に勝っていたからであり、もしそれがなければ今でも共存していたのではないだろうか、とそんなふうに思えるのだ。

私も洗濯板があってそこから洗濯機が発明されたと思っていたし、洗濯板自体の革新のことを知らず、洗濯機という全く新しい構造を創発したと思っていた。でもどちらもその原型はローマまで遡る上、どちらもほぼ同時期に大きな革新をしている兄弟のようなものだったらしい。そう考えるとなんだかとても洗濯板に愛着を感じてしまう。洗濯機だってたかだか100年なので、洗濯板で何か革新があれば洗濯機が衰退することもあるんじゃないかな。