「人間と放射線」の2章を読んで

書いては読み返し書き直しを繰り返しているうちに、良くなっている感じがしなくなり、約2ヶ月程放置してしまった。まだ書きたい事はあるし、書いてあることの正誤確認も十分とは言えないが、一旦終わらせてしまうことにした。

@awazekiさんの勧めで「人間と放射線」の2章を読んだ。放射線の人間への影響を考える上で最低限必要な物理学的なことが書かれていて、定性的な書かれ方をしているので読みやすかった。特に単位についてまとめて書かれているのがよかった。さすがにマイクロとミリを混在させて恣意的に印象をコントロールすることはないにしても、ベクレルとシーベルトの混在はその重篤さがわかりにくくなっていると思う。もちろん単位系それぞれに影響度を把握すればいいだろうけど、核種の提示無しにベクレルだけを信じるのはちょっと危険だ。仮に知っても何もできないけど、背景にある不明確な点は理解するべきだろう。知らなければならないのは誰しも同じ、でも何を知ればいいのかは人それぞれの知識によってきてしまう。私も十分ではない。でもこのような本を読んで少しでも理解が進めばリスクを減らすことができるので、続けて勉強したいと思う。

印象に残っていることを列挙する。

  • X線は放射エネル-ギーの1つである。つまり可視光やラジオ波と同じく光子の性質を持っている。可視光と違うのはエネルギーの大きさ。X線はそのエネルギーの大きさから電離作用や光電効果コンプトン効果、電子対生成といった電子への作用が大きく、この電子が生体へ影響を及ぼす。
  • 放射能の正体は水素原子核、電子、電磁波で、それぞれα線β線γ線と呼ばれる。γ線は前述のX線と同じ物であり、β線X線の作用による電子と同じである。α線もβγ線同様、電離作用を持つ。
  • γ線は生体を透過する場合生体に影響を与えることはないが、電子への作用が発生するとその電子のエネルギーによって生体への影響が変化する。この時の電子はβ線と同じ高いエネルギーを持っている。
  • α線β線の持つ生体への影響はその電荷の大きさと運動速度に影響される。運動速度と影響の関係は速度が遅い程大きい。この速度と電荷から影響度を算出したものをLETと呼ぶ。
  • γ線は人に対する透過率が大きいがα線β線は透過率は低い。γ線は高エネルギーだがα線β線の透過率の悪さからこの両者の人間に与える影響はα線β線の方が高い。
    • これはα、β線の粒子のが人に吸収されるわけで、つまり人体への影響が大きいことを意味する。
  • 物理半減期(以下単に半減期)が長いというのは長期間にわたって放射能が残るという意味で人への影響は大きい。ただし半減期とは核子が分裂する量の時間的推移である。人への影響は分裂時に起こるので、長い半減期はつまり分裂に遭遇する確率が減ることになるので人への影響は小さいということになる。つまり分裂時に遭遇するかどうかで影響が決まってくる。
    • このことから、内部被ばくの議論は身体が常に放射能に触れており、かつ吸収された放射線物質が影響することから、長半減期な核種ほど影響が少ない。外部被ばくは逆に短半減期の核種から一時的に逃げられれば、その後の影響は少ない。
  • ベクレルは核子数に相当する値である。シーベルトやレムはベクレルに核種毎の影響度を乗じた値である。この影響度は経験則でしかない。現状はセシウム137が多いのでベクレルとシーベルトは1対1に対応できるが、他の核種が入ってくるとシーベルトで評価する必要がある。